かわさき起業家オーディションビジネス・アイデア シーズ市場 第61回最終選考会(2009年10月2日開催)

Entry.6


ビジネスアイディアのテーマ

可溶性ポリイミドのグリーンテクノロジーへの展開

ビジネスアイデアの提案者

株式会社ピーアイ技術研究所

菊地 靖雄(キクチヤスオ)

【横浜市金沢区】

かわさき起業家大賞

かわしん賞

菊地靖雄さん

ビジネスアイディアの概要について

可溶性ポリイミドのグリーンテクノロジーへの展開

ポリイミド樹脂とは、1960年代に米国デュポン社により軍需用として開発された、耐熱性・耐薬性・剛直性・電気特性などに優れたスーパーエンジニアリングプラスチックです。
昨今は、電子部品材料の絶縁フィルムとして主にポリイミドフィルムが使用されております。そのポリイミドフィルムは溶剤に溶け難く、液状で使用する場合には、前駆体(ポリイミドフィルムになる前の状 態)であるポリアミック酸の状況で使用します。ポリアミック酸は非常に使い難い材料で

  • 冷凍保存が必要(解凍から使い出すまで相当時間が必要になる)
  • 高温の熱処理が必要(ポリアミック酸からポリイミドにするまで350℃以上の脱水反応が必要)

これに対して、PIは、可溶性タイプのブロック共重合ポリイミドを開発しました。開発のポイントは、材料をブロック毎に組合せ、触媒によりポリアミック酸を経ないで、使い易い可溶性ポリイミドを作る事が出 来るものです。

使い易いとは

  • 冷蔵・常温保管(25℃)が可能です。準備し直ぐに作業に取り掛かれます。
  • 200℃以上の低温熱処理でポリイミドフィルムになります。(ポリイミド化されているため)
  • 材料をブロック毎に組合せる事が出来る為、お客様の要求に合ったポリイミド材料の開発が可能

開発商品については

  • フレキシブルプリント基板用カバーコートポリイミドインク従来のカバーレイフィルの代替として、スクリーン印刷が可能な一液性のポリイミドインク及び感光性ポリイミドインクを開発し販売を行っている。効果は、・厚さを薄く出来る・カバーレイフィルムの使用量を削減できる(金型で打ち抜いた屑は産業廃棄物になる) ・高柔軟性 ・ハロゲンフリー・屈曲性 ・コストダウンなど。
  • リジットプリント基板の微細配線化材料従来はプリプレグと銅箔を張り合せ、エッチングにより回路形成を行っていた。この方法の回路形成の限界はライン(L)/スペース(S)で50/50umである。将来の微細配線化としては、L/S=10/10umが必要でありPIは銅箔にポリイミド接着剤をコーティングし開発・製品化した。現在量産中である。効果は、・L/S=10/10umの達成、量産は20/20um ・回路密着性確保 ・吸湿耐熱性の確保 などのインターポザー用途。
  • ハイブリッド・電気自動車の耐熱モーターコイル用ポリイミド電着ワニス従来のモーター用コイルは丸線で作られていた。丸線をコイル状に巻くと丸線と丸線の間に空隙が出来、巻線密度が向上しなかった。PIはポリイミド電着ワニスを開発し、平角線に電着方法で均一に絶縁皮膜を形成する事に成功した。この方法でコイルを作成すると、巻線密度向上し丸線よりも30%小さく出来る。モーターの大きさが同じで効率を上げることが出来る。現在量産準備中。
  • 半導体用スクリーン印刷ポリイミドインク従来はスピンコーターでWaferにポリイミドをコーティングしていた。この方法は、遠心力でポリイミド樹脂を吹き飛ばす方法で、材料歩留まりが20から30%であった。PIはこのムダを解消する為、ロスの無いスクリーン印刷工法で印刷可能なポリイミドインクを開発した。現在は半導体メーカーで量産試験中。効果としては、・ポリイミド材料ロスの低減 ・工程の簡略化によるコストダウンなど

新規性・優位性について

【新規性】

  • フレキシブルプリント基板用ポリイミドインクは、スクリーン印刷機と版があれば必要な所に必要なだけポリイミドインクを薄く印刷をすることが出来、コスタダウンも可能な工法である。従来はカバーレイフィルムを金型で打ち抜きし、位置合わせし、プレスで張り合せ成形する。この際金型でカバーレイフィルムを打抜くと屑が発生し産業廃棄物となる。
  • リジットプリント基板の微細配線化材料は、リジット基板で量産可能な微細配線を可能にした。銅箔とプリプレグの間に耐熱性・密着性などの高い特性のポリイミドを世界で初めて採用することにより、サブトラクティブ法やアディティブ法でも現在使っているラインで生産可能にしている。この製品があれば、半導体の22nmクラスのインターポーザーに耐えられる見込み。
  • ポリイミド電着ワニスは、PIが平角電線用途に三菱電線工業鰍ニ開発した。平角線へのポリイミド絶縁皮膜が他のディップコート品よりも均一な厚さと、金属への強い密着性によりマグネットワイヤーへの展開も期待されている。
  • 半導体用スクリーン印刷ポリイミドインクは、パッシベーション用途など半導体生産に使われる絶縁ポリイミドインクとし開発した。現在半導体Waferにスピンコーターでポリイミド樹脂をコーティングしているが、材料 ロスが大きい、パターンニングでは、露光・現像・水洗・乾燥硬化など多くの工程を必要とする。しかし、スクリーン印刷法でのパターニングでは、印刷・乾燥の少ない工程で生産が可能で有り、コスト削減が出来る。

【優位性】

  • ブロック共重合ポリイミドの独創的な製造方法により、お客様が望んでいるポリイミド絶縁材料を開発・生産する事が可能である。
  • 使い易いポリイミド材料として、設計から開発・量産対応している。

市場について

主なターゲット・市場の規模

  • フレキシブルプリント基板用ポリイミドインクは、カバーレイフィルムの代替として現在のマーケットは500億円/年あり ますが、シェア10%で50億円/年の規模となる。用途としては、携帯電話、デジタルカメラ、液晶関連など。
  • リジット基板の微細配線化材料は、現在最先端の携帯電話用IC基板に採用されていますが、軽薄短小化は止まらないので莫大な数量になる見込みである。将来のご使用先の目標数量は、100万m2/月である。用途としては、携帯電話のCSP基板、PC用インターポーザー基板など。
  • ポリイミド電着ワニスは、他社に無い材料である。ポリイミド絶縁材料を金属に均一にかつ薄膜に被服する事が出来る為、高効率、高密度、高耐熱、高信頼性などを有する。将来は、ポリイミド電着ワニスで1トン/月を目標に量産システムを構築中である。用途としては、ハイブリッドカー・電気自動車・高速鉄道などの高効率・省エネタイプのモーターなど。
  • 半導体用スクリーン印刷ポリイミドインクは、半導体のコスト削減に画期的な工法である。半導体メーカー一社と量産検討しているが、量産後は他社への横展開を図る計画である。用途としては、パワーデバイス用半導体、太陽光発電セルの絶縁材料など。

市場での競争力

新技術に対応する素材開発であり、新技術の優位性が確立できれば、それがスタンダード、標準にする事が出来る。

実現性について

実施スケジュール

各開発品目について、ビジネスパートナーを決定して行う。ビジネスパートナーと共に開発スケジュールを作成し、その進捗状況を把握しながら開発を進める

実施場所

量産化が実現した場合、ポリイミドの製造は弊社川崎工場(川崎市川崎区南渡田町1-15)で行う。

実施体制(従業員等)

開発については、現開発部の人員10名を開発アイテム別にPTを作り行う。

ビジネス・パートナー

パワーデバイス用半導体 日本の半導体会社
高耐圧モーターコール 三菱電線工業株式会社
光センサー 独立行政法人産業技術総合研究所 他事業会社8社

リスクとその管理

開発遅延による機会逸失が考えられる。弊社の開発進捗を常に把握するのと同時に、他社動向を常にウオッチし、場合によっては開発中止もあり得る。

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