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株式会社伊吹電子


生の声を伝える斬新な拡聴器で高齢化社会を支える


社長 松田 正雄氏
●事業内容
電子機器の回路基板設計、製作、実装組み立てが主力

■企業名 株式会社伊吹電子
■創 業 1971年4月
■所在地 〒213−0013 川崎市高津区末長236
■電 話              ■F A X 
■代 表 松田 正雄 氏
■資本金 1000万円
■売上高 1億1000万円
■従業員 20名

 URL: http://www.ibukiel.co.jp


 ヒット商品のアイデアは至るところに転がっている。「(株)伊吹電子」が商品化した音声拡聴器「クリアボイス」は、松田正雄社長の高齢の母を想う心から生まれた。補聴器の仲間だが、ひと味違う。新聞やテレビが取り上げて注目を集め、川崎市の米寿の記念品にもなった。今年は「川崎市記念品」にも選定された。耳が不自由になった人に、普通の人が話している生の声を伝えるクリアボイス、全国から問い合わせが舞い込んでいる。

● 耳が不自由な母親への想いが発想のきっかけ

 きっかけは滋賀県に住んでいた高齢の母。耳が不自由だった。補聴器を使っていたが、息子(松田社長)が帰ってきたときぐらいしか使わなかった。小さいものだから、外すとどこに置いたかすぐに忘れてしまう。そこで、松田社長は母親のために、ある程度の大きさが必要と考え、ダンボールにマイクロホンとスピーカーで試作品をつくった。初期の携帯電話ほどの大きさで、手に取ると自動的にスイッチが入る仕掛けをした。この試作品を原点に、プラスチックのケースに入れたりして改良し、知人や親戚に見せたところ、「これは商売になるんじゃないか」と示唆、自らも手応えを感じた。母親は商品の完成を待たずに亡くなったが、商品はマスコミの報道で全国的に知られる。

● 補聴器の概念を破り、持てば聴こえるケイタイ感覚

 「クリアボイス」は相手の話し声をマイクで拾い、音を増幅してスピーカーで出すだけ。複雑な機能などはついていないシンプルさ。一般の補聴器と根本的に異なるのは大きさとスタイル。手に取るとスイッチが入る、持てば聴こえる簡単、便利なケイタイ感覚で使える携帯電話型なのだ。長い時間聴きたいときは、付属の音量調整付イヤホンを使えば持たずに両手が自由に使える。「病気ではない、加齢によって耳が不自由になった人にピッタリ」と松田社長は自信をほのめかす。補聴器を長年使っている人は補聴器の音に慣れてしまい、人の生の声がわからなくなっているそうだが、生の声をそのまま拾うことにこだわった商品でもある。
 この商品が新しいニーズを呼び込んだ。音量調節用ボリュームがついた耳栓タイプ両耳イヤホン、片耳イヤホンなどの要望が出てきて、またたく間に付属品のラインナップができた。ケイタイ感覚で使える手軽さが受けて、買い物や外出の機会が増え、行動範囲が広がった人からは、首から下げる紐やイヤホンが邪魔といった声が寄せられた。「クリアボイス」に次ぐ第2弾商品、ヘッドホンタイプの音声拡聴器「ボイスカムバック」はこうして登場した。
 「ボイスカムバック」は聴きたいときだけ耳にかければスイッチが入り、外せば自動的にスイッチがオフになる。コードレスだから、本体だけをヘッドホンのように耳にかけ、話しながら両手も自由に使える。延長用マイクを使えば、テレビの視聴もできる。この商品を昨年のかわさき起業家選抜ビジネス・アイデアシーズ市場に応募、起業家大賞を受賞する。使い勝手の良さ、身につけたときの軽さなどコンセプトが認められたのだ。

● 介護やセキュリティー対策にも役立つ

 それだけではない。声の出にくい人、声の小さい人が買い物などに行ったとき、ほしいものを店員に伝えることがむずかしいケースもある。そういう人のために手のひらサイズの「マイク&スピーカー」も用意している。超ミニサイズの高感度ピンマイクでキャッチした音声を高性能のミニスピーカーがクリアに拡大、はっきりと正確に伝えるものだ。
 「個人タクシーの運転手さんなども高齢化し、お客さんの声が聴こえにくいような場合、助手席の後ろにマイクを置いておけば安心。聴き取りにくい会議や講演の内容も、遠く離れた席でも聴ける。各種窓口、駅売店、切符売り場でも使えるほか、シルバーツアーなどでの観光ガイドにもぴったり」といった便利さが売りだ。
 さらに、松田社長が新しい使い方があると紹介したのはセキュリティーや介護への利用。ドアノブやカギのそばに置いたり、窓ガラスにマイクを貼っておけば、異変をキャッチするセキュリティー対策にもなるという。ガラスを割られたときに信号で知らせるものはいくらでもあるが、音声で知らせるのは珍しい。また、寝たきり高齢者に介護者が付きっきりで世話をするのはたいへんなことだが、介護される人がベッドに挟んでおいて、薬を取ってとか何かをしてほしいと頼むときのコミュニケーションにも役に立つ。

● メーカーへ飛躍の扉を開いたオリジナル商品

 伊吹電子は電子機器に使うプリント基板の設計、製作が本業。現在はテレビ、パソコンなどに使われている液晶のコントロール装置がメインだ。液晶メーカーの下請けだが、町工場からメーカーに脱皮するチャンスになったのがクリアボイスをはじめとする音声拡聴器の商品群だ。母親が新ビジネスを拓くきっかけを与えたと言えるだろう。
 20年間、補聴器をつけている80歳のおばあさんと娘さんが伊吹電子を訪ねてきた。クリアボイスを通して聴いた娘の声に、おばあさんはこう言ったそうだ。「これが娘の本当の声なんですね」。この様子を見ていた松田社長、思わず心の中で快哉を叫んだという。補聴器の常識にとらわれず、使う人の立場に立ってつくった商品が喜びを与えたことを実感したからだ。
 「福祉や介護のことを知らなくても、利用者の声を聞けば商品のアイデアは出てくる。使った人が喜んでくれることが次の励みになる」。松田社長の経営スタンスがこの点に現れている。

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