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今野工業株式会社


へら絞り加工を守り育てて33年社員からも慕われる女性社長


社長 今野 タネ子氏
●事業内容
金属へら絞り加工、溶接加工、プレス加工、旋盤加工等

■企業名 今野工業株式会社
■創 業 1967年6月
■所在地 〒213-0006 川崎市高津区下野毛2丁目14番18号
■電 話 044-811-7204      ■F A X 044-811-6057
■代 表 今野 タネ子 氏
■資本金 1000万円
■売上高 約1億3千万
■従業員 8名

E-mail:info@herashibori.com  URL: http://www.herashibori.com
 
 川崎市高津区下野毛は、機械加工、板金、表面処理、組立など、もの作りの基盤技術を持つ工場の集積地で、住宅も仲良く隣接している準工業地帯である。そんな一角にある工場の2階、こざっぱりした事務所を訪問した。「主人が亡くなってから33年経ちました。へら絞り加工の技術も、経営も、何も知らない専業主婦が、社員に乞われるまま工場を引き継ぎ、社員に助けられ、今の会社にすることが出来ました。」と今野社長は語る。気さくで、話しやすく、頼りになるおかみさん社長といった感じである。

 当時小学生であったご長男は、取締役として、幼稚園生であった弟さんも当工場で、へら絞り加工の技術を守りながら、新しい展開への挑戦を模索している、頼もしい後継者である。

● へら絞り加工の最大の強みは多品種少量の曲面形状加工
 へら絞り加工とは、金属板と型を旋盤に取り付け、金属板を回転させながら、金属棒の先端につけたヘラで、型に押し付けながら成形する加工法である。
 成形加工にはプレス加工もあるが、これにはしっかりした金型が必要になる。この点、へら絞り加工は簡易的な金型や木型ですむので、早くて安くすむ。それゆえ、多品種少量生産には最適である。また、型に張り付ける内側部分は、素材そのものの美しさが残り、照明器具やアンテナなどの反射板には最適だという。
 当社では、30〜100個位の生産が多いが、一個だけ作ることも少なくない。製品は直径5ミリのカメラ部品に始まり、灰皿、照明器具のカバー、大きなものでは直径1.5メートルのアンテナまでさまざまである。変わった物では、ロケットの先端部分、劇場のオブジェ、戦車の砲台のカバー、水中照明の部品などがある。
 納品先は、自動車やカメラメーカなど、またプレス加工や板金業者が多い。川崎市には、へら絞り業者が数軒しかないといわれるだけに、人づてに聞いたり、インターネットで調べて相談に来る会社も多い。その結果注文する新規のところも多く、常に200社ぐらいある取引先のうち、20から30社は入れ替わっているという。営業なしでも新規注文があり、社長は「毎年が、新しいものへの挑戦なのです。」と語る。

● かわさきマイスターがへら絞り加工技術を守り、新しい流れに対応
 工場には自社製のシボリ旋盤10台を初め、ベテランがティーチングして、へら絞り加工をするCNC自動スピニング機2台、旋盤6台、その他パワープレスなど各種の機械が、所狭しと並んでいる。へら絞り加工に使う木型、金型は、ほとんど自製している。扱う材料は、鉄、アルミ、ステンレス、真鍮などさまざまである。最近では、強磁性体のパーマロイのへら絞り加工も経験した
 へら絞り加工の技術は、職人の腕によるところが大きい。川崎市には、極めて優れた現役の技術技能者を「かわさきマイスター」として認定する事業がある。毎年認定されるのは数名であるが、当社の工場長鍵屋氏はその一人で、その道45年の大名人である。さらに氏に続く名人も何人かいる。

● 社員思いの家族的経営
 社長は、秋田県の高校を卒業し、21歳で同郷の夫と結婚した。だが、35歳のとき夫が病気で亡くなってしまった。2人の子供を抱え、ローンもあり、会社の経営もへら絞り加工もわからず、夫が創業した会社を他人に引渡し、秋田の実家に帰るつもりでいた。ところが「奥さんが社長になってくれなければやめる。」との社員の声で、結局は事業を引き継ぐことになった。
 それから経理について猛勉強した。現場は工場長に任せ、専ら裏方に徹し、社員が働きやすい職場作りに心がけた。社員とは家族ぐるみで付き合い、正月には皆が社長の家に集まり、休みには皆で温泉めぐりをしたり、去年は家族共々ハワイ旅行もしたと言う。持ち家制度もあり、社員のほとんどが自宅を持っている。いわゆる家族的経営である。
 経営については、決算の内容を社員全員に公開し、ガラス張り経営を目指すことにより、社員に「自分の会社」と意識してもらうようにしている。社長が会社を引き継いだ当時の社員は、ほとんどが今もこの会社で働いている。「私が何も言わなくても、社員で仕事をどんどん進めてくれ、また周りの人の人情にも支えられ、ここまで来られたことに感謝しています。」と社長の言葉である。
 また社外活動では、実業界や専門職で活躍している女性で組織する世界最大の奉仕団体、国際ソロプチミストや川崎北法人会などで活躍している。

 社長の夢は、「あそこの工場で働きたいと言われるような会社にし、若い人にも来てもらい、立派な会社として次の世代に引き継ぎたい。」との事である。

● 新しい展開にも着目、頼もしい後継者
 当社がある下野毛には、30〜40代の意気軒昂の現役後継者達で、平成8年に立ち上げた「ものづくり共和国」がある。情報発信や共同受注など、新しい発想での活躍が注目され、NHKや新聞、雑誌などで取り上げられている有名なグループである。今野社長のご子息もこのグループの主要メンバーである。
 人の腕に頼るへら絞り加工は、一見時代遅れのように見える。そのためか同業者が少なく当社に相談に来る会社が多い。大幅に仕事が拡大する業界ではないが、需要は確実にある。一種の隙間産業とでもいおうか。次世代を担うご子息二人は、社長、社員と共にへら絞り加工を守り、育てながらも「ものづくり共和国」などの活動の中で新しい展開を模索している。

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