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株式会社 フジクロム社


環境との調和を目指す硬質クロムめっきのリーディングカンパニー


社長 藤田 茂雄 氏
●事業内容
工業用クロムめっき、FF式隔膜電解槽の設計・製作・販売

■企業名 株式会社 フジクロム社
■創 業 1955年(昭和30年)4月
■所在地 〒210−0854 川崎市川崎区浅野町3−1
■電 話 044−355−5655 ■FAX 044−355−5625
■代 表 藤田 茂雄 氏(フジタ シゲオ)
■資本金 5,000万円
■従業員 40名
■U R L  http://www3.ocn.ne.jp/~fujicr/
 

 工業用クロムめっきの「正寸めっき仕上げ」の技術を持つ日本でも数少ない企業である。“クロムめっき”とは耐久性や耐摩耗性を要する機械部品などに施すめっきである。その中でも“正寸めっき仕上げ”とは図面の指定寸法通りにめっきを施し、研削仕上げなどの後処理を不要とした高精度めっき加工のことだ。フジクロム社では誤差3ミクロン(0.003ミリ)以内という超高精度のめっき技術を確立する一方、廃液リサイクルの環境保全技術を一早く確立して新たな顧客開拓に着手してきた。さらにその技術を理論として学び、実践を通じて従業員に習得させることで技術伝承を図り、従業員のモチベーションアップにも結び付けている。「さまざまな知識を得て高度な技術を身に付けることで、従業員のやる気も出てくる。中小企業だからこそしっかりした教育システムを導入してレベルアップさせていくことが重要であり、このことは一企業だけでなく、業界全体の課題でもある」。藤田茂雄社長の従業員育成への想いはモノづくり人材の底上げにも通じている。
● 廃液リサイクル率98%のFF式隔膜電解法を開発

 フジクロム社は1955年に藤田社長の実父である藤田裕志氏が東京品川区(1961年に横浜市鶴見区に移転)に設立した。“日本一のクロムめっき会社を目指す”という心意気を込めて、富士山と藤田のフジを合わせて命名した。飛行機のエンジン設計技師であった裕志氏は戦前にドイツ(ボッシュ社)で勉強し、そこで飛行機の噴射ポンプにクロムめっきが施されていることを知る。戦後、米国からクロムめっきが施された噴射ポンプを持ち帰るなど学者肌の裕志氏は、日々、クロムめっきの技術導入と新たな技術開発に取り組みながら何とか事業化に漕ぎ着けた。創業当初からボッシュ社のディーゼルエンジンのクロムめっきを手掛け、国内メーカーの自動車エンジン、各種機械部品など業容を拡大してきた。転機は1972年にFF式隔膜電解法を開発したことでもたらされた。同電解法はクロムめっき老化液の再生を可能にした技術だ。環境保全の観点から当時の資本金(1000万円)に匹敵する投資を行い、めっき液の98%リサイクルを達成。同時にこの技術の確立により、正寸めっき仕上げも可能となった。めっき液は水・6価クロム酸・硫酸で構成されているが、使用とともに6価クロムが3価クロムに劣化する。通常はこれを廃液として処理するが、同電解法により劣化した液を新液と同じ状態に再生するとともに、めっき面の凹凸の要因となる、めっき液に溶け込んだ鉄分も取り除くことで一定の濃度を保つ仕組みだ。これによって正寸めっきに必要な条件を自動的に設定することが可能になり、熟練工の勘だけに頼らずに最適な濃度調整が行えるようになったのである。
 1984年には完全なる公害防止と業容拡大を目指して本社工場を現在地に移転。大学卒業後、三菱自動車の生産技術部門に在籍していた藤田社長もフジクロム社に入社している。生産技術を長く担当してきた藤田社長は、改善活動にも力を入れて取り組んできた。その結果、20年で3,000件の改善を実施し、従業員が60人いた20年前よりも40人の現在のほうが生産性は上がっている。また、めっきの精度を上げるためには、めっき液に適した治工具の開発が不可欠と考え、めっき技術だけでなくオリジナルな治工具も作れる多能化を従業員に求めてきた。しかし、ここ数年で藤田社長の考えに変化が出てきた。自分と同年代である団塊世代の退職により技術継承が問題になり始めたころ、中堅以下の従業員たちの技術力を見直すと、それまでの認識よりも意外と低いことがわかってきた。モノづくりの基本は生産技術であるが、その基礎となる知識の習得(座学)と実務教育が結びついていないことに気付いたのである。

● 座学と実務による従業員教育で技術の底上げを
 藤田社長は現場で技術を身につける一方で、めっきの基本を専門書で学ぶことを義務付けた。社内に各従業員の技術能力を記した一覧表を張り出し、それに基づいて個人別業務目標と教育訓練の実績フォローを始めた。「個人に適した内容と各自にあったプランを用意し、一定の評価基準に基づき全員が納得するように進めていった。当初は従業員の抵抗も多少あったが、力量が上がるとともに従業員にも活気が出てきた」と笑顔で語る。座学は藤田社長が主に講師を務め200時間以上を費やす。レベルに合わせ1回に2〜3人に対して就業時間中に講義を行う。短期的にはコスト高とも思えるが、個々のレベルアップによる効果はそれ以上になるという。「当社は全員が正社員であり、技術の伝承が出来ないためアルバイトや外国人労働者も受け入れていない。従業員の技術力こそが資産である以上、コストをかけることは当たり前。この方針は今後も変わらない」と、“モノづくりは人づくり”であることを藤田社長は強調する。すでにここ数年で従業員のレベルが予想以上にアップしたため評価基準を強化した。上級者は習得するだけでなく、指導できるレベルまでを要求するよう変更し、さらに全体の技術力強化が進み始めている。
 こうした藤田社長の考えは自社のみならず業界活動にも反映している。2005年〜2007年まで日本硬質クロム工業会の会長を務めた際、業界の教育プログラムの策定を提唱。加盟各社の技術ノウハウや教育マニュアルを共有化して若手技術者の育成と業界全体の底上げに取り組んだ。手始めにテキストを作成し、それをもとに全国数か所で講習会を実施し、多くの受講生が集まった。「会員企業の中にはよくここまでノウハウを公開してくれたという例もあり、それだけみなさんの業界に対する危機感が表れていると感じた。次の会長も継続して取り組んでいただいており、当社も業界のために協力していきたい」と藤田社長は意欲を見せる。
● 環境を事業のキーワードに従業員の意識改革にも着手

 同社ではこうした人材教育の核としていま最も重視しているのが環境問題だ。クロムめっき自体が環境を十分に認識する必要があり、従業員全体の意識改革も必要になってくる。また、藤田社長自身も海外の秘境などへの興味が強いだけに、環境問題に対する意識も高い。「めっき技術だけでなく、リサイクルや地球環境問題への取り組みは企業活動のポイントになる。そのためには従業員全員が環境保全に関する考え方を持つことが大切だ」と藤田社長は言う。環境を切り口としてのワンステップ上への成長と新たなビジネス拡大が注目される。

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