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会社名有限会社 松本酒店


生き残りの秘訣は本業に軸足を定めた新展開 町の酒屋が仕掛けるB級グルメ「松モッちゃん」


代表取締役社長
松本 和晃
事業内容事業内容
自動販売機設置、酒屋運営、食品販売・デリバリーサービス

  • 企業名   有限会社 松本酒店
  • 創 業   1938年(昭和13年)
  • 所在地   川崎市川崎区中島3−8−1
  • 電 話    044−233−5078
  • 代 表   松本 和晃(マツモト カズアキ)
  • URL    http://www.matsumochan.com

 「松モッちゃん」とは、老舗の酒屋「松本酒店」が販売する豚のモツ煮込みである。「美味しい一献のために美味しいツマミをお客様に届けたい」との想いから、モツの鮮度に徹底的にこだわり、それをていねいに下処理することで、特有の臭みの無い“ぷりぷり”の食感を実現している。数種の野菜とともに秘伝の味噌でじっくり煮込まれたモツ煮込みは、濃厚な美味さの中にどこか懐かしいおふくろの味がする。

● 酒屋の冬の時代を乗り切る2代目社長の挑戦


 松本酒店は、川崎区の中島商店街の一角に店舗を構える、創業80年近い老舗の酒店である。創業当時は物資が不足していた時代のため、酒類を中心に、タワシや鍋、日用品など扱うものは“何でも売れた”らしい。松本酒店は町の酒屋さんとして長らく地域の生活を支えてきた。
 松本酒店に転機が訪れたのは、1990年代初頭、酒類ディスカウントショップが台頭したことによる。それまで、定価販売が当たり前の酒類市場に価格破壊の波が押し寄せ、個人商店の酒屋に冬の時代が到来した。市場の競争激化により、松本酒店の売上も激減した。
 そんな中、先代にあたる2代目社長は新規事業として、飲料の自動販売機(以下、「自販機」)の設置ビジネスを1993年にスタートさせた。これは、飲料の自販機を工事現場に設置して、自社の取扱商品であるジュース類を補充し、空き缶と代金を回収する事業である。夏場の工事現場では、日に23回補充するほど飲料が売れたと言う。関東周辺を中心に事業は順調に拡大し、業界では異例とも言える66,000/年ケース(24本入りで約160万本)もの飲料を販売していた。現在は補充・回収業務をメーカーに外注したことで、14万ケース/年(同じく約340万本)にも及ぶビジネスに成長した。冬の時代の中で2代目社長は、町の酒屋の安定経営の礎を築いたのだった

● おもてなしの心を運ぶ3代目社長の新展開


 自販機を工事現場に設置すると、やがて現場で開催される懇親会用の酒類や、肉・野菜などの食材の配達のリクエストも寄せられるようになった。元々、食材は取り扱っていなかったが、「お客様の要望に応えたい」との一心で、地元の商店街で食材調達し、酒類の配達の“ついで”に利益を乗せずに提供していたところ、安さが評判となって注文が徐々に拡大していった。
 2008年に3代目に就任した松本現社長は、こうした流れを受けて、本格的に食材のデリバリーサービスをスタートさせた。メニューはバーベキューセット、オードブル、サンドイッチ等40品目に充実させ、得意先もゼネコンを中心に官公庁にも広がった。注文が入るとお客様に喜んでもらうために、小田原や筑波など川崎から距離のある地域にも、配達料無しに品物を届けた。こんなエピソードもある。20113月に発生した東日本大震災の当日、徹夜で警備にあたっていた得意先に、6時間もかけて食べ物や飲み物を差し入れしたそうだ。その理由を尋ねると、「親戚から警備の仕事の大変さを聞いていました。自分も何か応援したいとの気持ちで届けました。」と当時を振り返った。松本社長からの最大の届け物は、もてなしの「真心」だったに違いない。
 ある冬の時期、工事現場の得意先から「作業員が温まる料理はないだろうか」との要望を受けた。その時、松本社長の脳裏に浮かんだのは、料理好きな母が作る秘伝のモツ煮込みだった。小さい頃から慣れ親しんだその味は、きっと作業員の方々の身体を、芯から温めるに違いないと確信したらしい。

● 秘伝の濃厚モツ煮込み「松モッちゃん」の製品化


 家庭でモツ煮込みを美味しく作るのは、とても手間のかかる作業である。豚のモツは脂が多く、下ごしらえが煩わしい上、茹でこぼしと言われる下茹での際には、独特の臭みが家中に充満する。しかし、これを怠るとモツはゴムのように固くなってしまう。さらに、根気強くアクを取り除きながら長時間煮込まないと、コクも旨みも出てこない。
 松本社長の母が作るモツ煮込みの美味しさの秘訣を伺ったところ、一番重要なポイントはモツの鮮度と仕入先の選定にあるらしい。これを丁寧に下処理したうえで、アクを取りながら秘伝の濃厚味噌でじっくりと煮込むことで、臭みのないぷりぷり食感の究極の煮込みが完成する。

 「松モッちゃん」と名付けられたモツ煮込みはたちまち評判を呼んだ。その味はどこか懐かしく、病みつきになる濃厚な美味さである。同社のデリバリーサービスの中でも、ダントツの一番人気メニューとなり、多くのファンを獲得した。工事現場に鍋で届けると、いつもお代わりの列ができた。すると今度は、「持ち帰りたい」、「一般販売してもらいたい」との多くの声が寄せられるようになった。“お客様に喜んでもらえるなら”と、ここでも松本社長のおもてなしの心が顔をのぞかせた。
 松本社長は、知り合いを通じて食品メーカーに依頼し、持ち帰り用冷凍パックの製品化を決めた。しかし、メーカーにレシピを伝えても、最後の味加減で母親の味を再現することができず、完成までには随分と苦労したらしい。それでも、松モッちゃんを愛する多くのファンの期待に応えるために、試行錯誤を重ねて3年前にようやく「冷凍松モッちゃん」が完成し商品化に至った。

● 目指すは川崎発B級グルメ大賞


 松本社長に今後の展開を伺うと、「父親から酒屋の本業から離れたことはするな、と言われてきました。自販機の設置もモツ煮込みの販売も、本業を拡大するための事業です。だから、これからも酒屋に片足をおいて、外に出るのは半歩までと決めています」と堅実な経営方針を語った。その上で、「今年は社員も2名増えたので、松モッちゃんが広まったらモツ煮込みの専門店を構えたいですね」と新たな意欲をのぞかせた。「でも昔から、『酒屋と米屋は3代で終わる』との都市伝説があるので、まずはそれを打ち破るのが目標ですね」と明るい笑顔で語ってくれた。
 冷凍の松モッちゃんは、松本酒店の店頭のほか、インターネットのオンラインショップでも購入することができる。価格は1パック税込み390円(1.5人前のボリューム)、便利な10袋・20袋セットも用意されている。市内のいくつかの飲食店でも松モッちゃんを提供している。
 お勧めの食べ方は、こんにゃくや水切りした豆腐を一緒に煮込み、ネギを乗せて熱々のまま頂くやり方だ。美味しい一献のために酒屋さんが作っただけに、お酒との相性は抜群である。うどん好きなら、松モッちゃんと麺つゆと一緒に煮込む「モツ煮うどん」もお勧めできる。どんぶり飯に松モッちゃんをぶっかけ、「モツ煮丼」にして豪快にかっ込むのもたまらない。どうやら筆者も気づかぬうちに松モッちゃんに病みつきになっていたようだ。



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