貸切バスのタイムシェアリングサービス「NORI・NORI」
第142回 かわさきビジネス・アイデアシーズ賞
会社紹介
私たちは、貸切バスを「タイムシェア」する仕組みを活用した、法人・団体向けの送迎サービスを提供しています。自社でバスを保有するのではなく、信頼できるバス会社に運行を委託し、必要な時間帯だけバスをシェアしてご利用いただくスタイルです。たとえば「午前中はA社が利用し、午後はB社が利用する」といった形で当社が運行スケジュールを組むことで、短時間でもリーズナブルに利用することが可能になります。
起業を決めた背景には、私自身のキャリアの転機があります。前職ではおもちゃメーカーに在籍し、子ども向けの商品やサービスのマーケティング支援を担当していました。自分のアイデアが子どもたちの笑顔につながる、とてもやりがいのある仕事でしたが、組織の中でのキャリアにはどうしても年齢による区切りがあります。学生時代から新しいことをやるのが好きで「いつかは起業したい」という想いもあったので、「どうせなら早いうちに」と45歳のときに起業を決意しました。貸し切りバスのタイムシェアによって、バス会社、地域の事業者、利用者さん、みんなが幸せになれる。そんな新しい地域の循環の輪を少しずつ広げていきたいと考えています。
基本情報

株式会社norinori
〒231-0062
神奈川県横浜市中区桜木町1-101-1 クロスゲート7F
受賞したビジネスに至った経緯
前職のおもちゃメーカーを退職後、保育園と子ども向け歯科医院をつなぐマッチング事業を担当していた際、「移動手段の確保」に悩む事業者が少なくないことに気づきました。保育園で「子どもたちをいろいろな場所へ連れて行きたいけれど、そのための車がない」との悩みを聞いたほか、歯科医院から「共働き世帯が増え平日に来院できる子どもが減っている」といった声を多く耳にしました。この課題を解決できれば、子どもたちにとっても地域の事業者にとってもプラスになるのではないか。そう考えてさまざまな移動手段を検討した結果、最も適していると感じたのが「貸切バス」という選択肢でした。ただ、短時間利用の場合だと貸し切りバスはコストに合いません。安全確保のため、出発前後に1時間ずつの点検が義務づけられており、たとえ10分の移動でも最低5時間分の料金がかかってしまうからです。そこで考えたのが「バスのタイムシェア」という仕組みでした。1台のバスを時間帯ごとにシェアすれば、費用を抑えつつ、必要な時間だけ使うことができます。横浜エリアで実証実験を行ったところ、習い事の送り迎えや企業の従業員送迎など、想像以上に多様なニーズがあることが分かりました。
一方で、サービス化には旅行業法などの法規制をクリアする必要があり、制度面の調整には約1年を要しました。こうした課題を一つひとつ乗り越え、今年3月に正式なスタートを迎えることができました。
サービスの特徴

私たちのサービスには、大きく分けて三つの魅力があります。まずは価格です。一般的な貸切バスは、片道30分でも税込み3万円以上かかりますが、当社のサービスなら1万円程度で気軽にバスを利用できるようになります。実際、保育園からは「近所の公園だけでなく月に1回自然体験に連れていけるようになった」「この価格だから予防歯科の送迎を実現できた」といった声をいただいています。利用のきっかけは“安さ”でも、本当の価値は、短時間・短距離でも気軽に移動できる手段を通じて、新しい体験が生まれることにあります。
二つ目は安全性です。私自身、前職から子ども向けのサービスに関わってきたこともあり、移動における安全確保には特に強い思いがあります。20~30人の園児を公共交通機関で安全に移動させるのは、保育士さんにとって大きな負担です。私たちのバスを利用すれば園の目の前から出発できますし、二種免許を保有するドライバーの運転のもと、子どもたちを安全に目的地まで送り届けることができます。
そして三つ目は、信頼できる運行体制です。バス会社とのつながりもゼロから構築し、協力体制がしっかり整ったパートナーに運行をお願いしています。もっと安く提携できるバス会社もありましたが、金額ではなく、私たちの想いに共感し、一緒に事業をつくっていこうと考えてくれる会社にお願いすることにしました。手軽な価格、安全性、信頼できる運行体制。この三つをそろえることで、今までにない新しい価値をお届けしています。
現状の課題
サービス面での課題には、システム化の遅れが挙げられます。貸切バスの利用には見積もりに複数回のやり取りが必要で、手間と時間がかかるのが一般的です。私たちはその工程を完全にシステム化し、Web上で即時に料金を確認できるような仕組みを目指しています。しかし現状は、まだアナログで対応せざるを得ない場面が多く、返答に時間を要することもあります。こうしたレスポンス面の改善は、もっとも重要な課題の一つです。
また組織体制にも課題があります。現在は、各分野を専門家に業務委託して進めていますが、今後はフルコミットできる社員の採用を考えています。特に重視しているのが、バス会社との関係づくりを担うポジションです。サービスの要であるバス会社との信頼関係を構築し、全国展開に向けて共に動けるコアメンバーが不可欠になってきます。利用者側の開拓営業については外部パートナーやAIを活用し、効率化を図っていきながら組織を強化していきます。
今後の展開
今後は貸し切りバス事業を軸にしながら、新たな価値を生み出す取り組みも広げていきたいと考えています。その一つが集客サポートによる付加価値の提供です。例としては、スイミングスクールと幼稚園をつなぎ、スクールの空き時間に園児を送り届けることで新たな利用者を生み出す仕組みを構築しました。これによりスイミングスクール側は売上アップが期待でき、園側は新しい体験の機会を得られるようになります。こうした利用者同士をつなぐ役割も担うことで、収益化を図る取り組みを始めています。もう一つは、柔軟な車両マッチングの展開です。たとえば園児30人の移動には、マイクロバス1台では足りず、大型バスでは大きすぎます。そんな場合はタクシーも併用すると効率的です。そこで今後はタクシー会社との連携も視野に入れ、人数に応じた最適な車両体制を提案していきます。
現在は横浜・川崎を中心に展開していますが、今後は全国への拡大と、観光やインバウンドなどBtoC領域への展開も視野に入れています。このサービスは、地域で最初に仕組みを確立した企業が圧倒的に有利となるビジネスモデルなので、今こそスピード感を持って取り組むべきタイミングです。将来的にはIPOも見据えながら、着実な成長を目指していきます。
パートナー企業との連携で実現したいこと
まずはぜひ、サービスを体験していただきたいというのが率直な想いです。この事業は3月にスタートしたばかりですが、ありがたいことに、多くのお客様が継続してご利用くださっています。実際にお使いいただく中で価値を感じていただければ、自然とこのサービスの輪も広がっていくはずです。また、ショッピングセンターや病院での送迎、企業の従業員送迎など、定期的な運行でのご利用は、サービスの安定運用につながり、より柔軟な対応も可能になります。まずはお気軽にお声がけください。
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