チームのタスク管理ツール「スーツアップ」で労働生産性を上げる
第142回 かわさきビジネス・アイデアシーズ賞
審査員会特別賞
会社紹介
「スーツアップ」は、ITリテラシーに自信のない方でも直感的に使えるタスク管理ツールです。チームの業務を可視化し、簡単な運用を実現することで、効率的でスムーズなチーム運営をサポートします。
この事業の原点は、今から3年半前にさかのぼります。当社はもともと経営コンサルティング会社として2014年にスタートした企業です。たくさんの企業の業務改善に携わる中で「組織が機能していない」「チームが分業できていない」といった課題に直面し、それを改善するだけで、大きな成果につながっていく場面に何度も立ち会ってきました。そうした経験から「この改善の仕組みをシステム化できたら」と考え、自ら資金を投じて開発・運用に着手したのが「スーツアップ」です。私が何より大切にしているのは、「当たり前のことが当たり前にできる」環境をつくることです。普通の人が、普通に働いて、きちんと成果を出せる。そんな仕組みを支えるプロダクトを実現したいと考えています。良いプロダクトは自然に広がっていくものです。まずは国内でそのモデルをしっかりと確立し、いずれは世界でも展開できるプロダクトへ育てていくつもりです。
基本情報

株式会社スーツ
〒102-0074東京都千代田区九段南4丁目6番13号
ニュー九段マンション301号
受賞したビジネスに至った経緯
私は約20年間、中小企業の経営を専門分野として取り組んできました。コンサルタントとして、また時には実際の経営者として、中小・中堅企業からスタートアップまで多くの企業の経営や事業再生に携わってきた経験があります。具体的には伊豆の観光スポットの運営のほか、YouTuberプロダクションなどで実際に代表を務め、経営の立て直しを図ってきました。こうした実績を積む中で、投資ファンドを経営する友人たちから「どうやって企業価値を高めているの?」と聞かれることが増えてきました。私がやってきたことはシンプルで「組織を組織として機能させる」ことに尽きます。特に中小企業やスタートアップの経営では、タスクの分担や進捗管理といった基本的なチーム運営の仕組みを整えるだけで、業績が大きく改善するケースが多くありました。その際、私はExcelなどの表計算ソフトでタスク管理を行い、メンバーにリマインドを送るなど、細かな対応を続けていました。すると経営者仲間から「小松さんはマメすぎる」「普通の管理職には真似できない」と言われることがよくありました。その言葉をきっかけに、誰かの“マメさ”に頼ることなく、誰でも簡単に使えてチーム運営が楽になるツールが必要なのではないかと気づいたのです。たとえばタスクの締切が近づいたら自動で通知が届く。スケジュールはカレンダーと連携できる。そうした仕組みがあれば、多くの企業の経営レベルをもっと高めることができる。さっそく経営者仲間を中心に約200社へヒアリングしたところ「使ってみたい」といった声が多く寄せられ、手応えを確信しました。こうして「スーツアップ」の開発を本格的にスタートすることになりました。
サービスの特徴

「スーツアップ」は、私のこれまでの経営ノウハウや現場での経験をもとに開発したツールです。本当に現場で使われるプロダクトとは何かを追求した結果、たどり着いた答えは「シンプルであること」と「慣れ親しんだ操作性」でした。実際、働く人の約6割が何らかの形でタスク管理をしているというデータがありますが、最も多く使われているのはExcelやGoogleスプレッドシートといった表計算ソフトです。一方で高機能なプロジェクト管理ツールは、ITリテラシーに不安がある現場では使いこなせず「結局Excelに戻ってしまった」というケースも少なくありません。そうした背景を踏まえて「スーツアップ」ではあえてExcelに近いインターフェースを採用しました。入力項目は「誰が」「何を」「いつまでに」の3点に絞り、カレンダーやチャットツールとの連携、自動通知機能を備えています。何より重視したのは「チームで無理なく使えること」で、その一点に最先端のテクノロジーを注ぎ込みました。これこそが「スーツアップ」の最大の強みになります。
現状の課題
サービス面における課題の一つが、UX / UI のさらなる向上です。Excelに近い操作感を実現するのは決して容易なことではありません。というのもExcelには約40年、スプレッドシートには15年以上の歴史があり、膨大な時間と資金、そして技術が投入されてきたツールだからです。一方、「スーツアップ」は開発開始からまだ3年半。すでに多くの企業に導入いただき、一定の満足度も得られていますが、Excelやスプレッドシートと比較すると、まだいくつかの面でギャップが残っています。現在、国内外から集めた優秀なエンジニア約10名のチームで開発を進めていますが、理想のかたちに追いつくには、まだまだ時間と努力を重ねる必要があると感じています。もう一つの課題は、エンジニアの採用です。私たちは世界標準にふさわしいプロダクトの実現を目指しています。そのためには一定以上のスキルと経験を持つ人材の存在が不可欠です。AIの活用などを通じて開発効率の向上にも取り組んでいますが、最終的にプロダクトの質を決めるのは、やはり人の力です。今後も技術のブラッシュアップと、それを支える人材の獲得に力を注いでいく必要があると考えています。
今後の展開
私たちは、「ローカライズされたプロダクトをつくる」ことを重視しています。ここで言うローカライズとは、単なる言語対応ではなく、日本の現場で実際に使われているツールに合わせることを意味します。その点「スーツアップ」は、すでに国内で広く使われているビジネスチャットと連携しており、今後も日本企業で導入の多いグループウェアやチャットツールとの連携を予定しています。国内特有のツールとの連携は、グローバルな視点では「ローカル対応」と見られるかもしれません。しかし、日本の中小企業にはこれらのツールが日々の業務に深く根付いており、今や欠かせない存在となっています。「スーツアップ」の主な顧客は、従業員10〜100人規模の中小企業。この層だけでも全国に約110万社、約3,000万人の人が働いていて、非常に大きな市場を構成しています。その中で5,000社に導入できれば、時価総額は500〜600億円規模になると見込んでいます。私たちは、この広大な市場に向けて「誰でも簡単に使えるツール」としての立ち位置を確立し、国内のマーケットリーダーになることを目指しています。
パートナー企業との連携で実現したいこと
今後はパートナーセールスを中心に販路を広げていく方針です。そのため、中小企業とつながりを持つ企業様との連携を模索しています。特に地域に密着し、地元の中小企業との関係を大切にされている代理店や事業者の方々との協業には、大きな可能性を感じています。現在、電話機やコピー機といったハードウェア商材は市場全体で縮小傾向にあり「そろそろSaaS商材にもチャレンジしたい」という声も多く聞かれます。「スーツアップ」は、そうした企業様にとって、提案しやすく、扱いやすいサービスです。パートナー企業のみなさんとともに、お互いに価値のあるビジネスを展開できたら、とてもうれしく思います。
