アナログ広告の反響効果を測定するDXツール「われどこ」のご提案
第142回 かわさきビジネス・アイデアシーズ賞
会社紹介
紙のチラシや郵送DMといったアナログ広告は、どれだけの人に見られ、どの程度効果があったのかを把握しにくく、「配布して終わり」になってしまいがちです。近年は、効果が明確に見えるデジタル広告が主流となり、アナログ広告は時代遅れのように扱われることもあります。
そうした現状を変えたいという思いから、私たちはアナログ広告の効果を「見える化」するシステム「われどこ」を開発しました。紙媒体の利用に限界や迷いを感じている企業をサポートするDXツールです。私はかつて、大手企業でエンジニアとして勤務していました。大規模なプロジェクトに携わる中で得られる充実感はありましたが、組織が大きい分、自由な発想をすぐに形にすることが難しく、次第にもどかしさを感じるようになりました。「こんな仕組みがあれば便利なのに」と考えることが好きだった私は、次第に知人の会社からIT関連の相談を受けるようになり、それをきっかけに独自のサービス開発に踏み出しました。こうして誕生したのが「われどこ」です。
今後も、アナログ広告の可能性を広げ、多くの企業の力となれるよう着実に取り組んでまいります。
基本情報

株式会社frame and surface
〒220-0012
神奈川県横浜市西区みなとみらい2−2−1横浜ランドマークプラザ5F
受賞したビジネスに至った経緯
ある日、ポスティング業を営む知人から「この業界は価格競争に陥り、どれだけ安くできるかしか見られていない」と相談を受けました。中には、配布スタッフにGPSを持たせて「確実に配布した」と証明する企業もあると聞きましたが、それでも反応が得られず、顧客が離れていくことが多いという話に大きな衝撃を受けました。そこで私は、知人に「チラシに“配布後の反応”が分かるような付加価値をつけてみては」と提案しました。これが「われどこ」の原型です。「そのチラシを何人が見たのか」を可視化できる仕組みを実装し、試験的に導入してもらったところ、確かな手応えが得られ、業界内でも話題となりました。当初は知人を助けるための一施策でしたが、このアイデアによってポスティングの価値そのものが再評価されるようになったのです。「正式なサービスとして提供してほしい」という声も多く寄せられ、実証実験や競合調査を経て「これはいける」と確信。何よりも、お客様から喜ばれることが後押しとなり「われどこ」を正式にリリースする決意を固めました。
サービスの特徴
「われどこ」は専用のQRコードをチラシや郵送DMに貼るだけで、どの地域で、どのような人が、いつ・どんな興味を持って反応したのかを可視化できるサービスです。天気・使用言語・端末の種類など、詳細なデータも取得でき、エリアマーケティングの強力な武器となります。また、自社で顧客リストを持っていれば、郵送DMに個別のQRコードを貼ることで休眠顧客の洗い出しやリストのメンテナンスにも活用できます。
さらに「このキャッチコピーは反応が良かった」「このビジュアルは響かなかった」といった訴求ごとの効果を分析することも可能です。まさに紙に取り付ける“マーケティングセンサー”と言える存在です。実際に、「われどこ」のデータを活用して施策を見直した大手企業もあり、私たちの技術が“差別化の武器”としてお役に立てていると実感しています。

現状の課題
「反響の見える化」だけにとどまらず、取得したデータを次の施策に活かせるようなサービスへと進化させるのが今後の課題です。そのためにはAIとの連携が不可欠で、「この反応を踏まえ、次はこの施策が有効」といった提案を自動で行える仕組みを目指しています。現在はそのための企画・戦略を練り、次のステップへの準備を進めている段階です。また、組織面でも課題があります。従来は技術者同士がフラットに関わるゆるやかな体制でしたが、大手企業にも導入されるようになり、社会的責任や信頼への対応が求められるようになりました。今後は一定のマネジメント機能や階層を取り入れつつ、従来の良さを損なわずにバランスよく組織を整備していく必要があります。サービス品質の向上、多様化するニーズへの対応のためには、単に人を増やすのではなく、マネージャー層の配置や情報共有体制の構築といった構造的な強化が急務です。
今後の展開
「われどこ」を「必要なときだけ使うツール」から、「これがなければ業務が回らない」レベルに進化させたいと考えています。そのために、蓄積した運用データをAPI連携により、お客様の社内システムと統合できる構想も進行中です。これにより、広告効果の測定だけでなく、戦略設計にも活かせるツールへと成長させたいと考えています。
また、「われどこ」の主なユーザーは、新聞折り込みやチラシを扱う広告代理店・印刷会社などです。これらの業界では、今なお電話やFAXなどアナログなやり取りが多く、DXが進みにくい現状があります。だからこそ、「われどこ」が業界全体のデジタル化を促進するツールとして役立てると信じています。組織面では、「営業・企画部門」と「開発部門」の2軸体制を整備し、開発はフロントエンド/バックエンドに分け、複数サービスを横断的に支えるチームを組成します。そして最も注力すべきは営業体制の強化です。これまでエンジニア主体で事業を進めてきたため、営業専任人材が不足していました。今後はCMO的な視点を持つ人材の登用も視野に入れ、事業全体を俯瞰できる営業・企画体制を目指していきます。
パートナー企業との連携で実現したいこと
紙媒体を扱う広告代理店、印刷業、コンサルティング会社、デザイン会社などとの協業を通じて、新たな価値の創出ができると考えています。
また、業界にかかわらず紙のチラシや郵送DMを活用している企業、たとえば銀行、不動産、保険、フランチャイズなどの分野においても、「われどこ」は幅広くご活用いただけると信じています。こうした多様な業種との連携を通じて、新たな価値を共創し、社会全体のマーケティング進化に寄与していきたいと考えています。
