廃棄物から水素、水素から再生可能エネルギーへ!
第143回 かわさきビジネス・アイデアシーズ賞
会社紹介
日本では毎年5000万トン以上の有機性廃棄物が発生し、その98%が焼却処分されています。ただ、焼却は大量のCO₂が排出されることに加え、莫大な費用もかかるため自治体の負担は膨らむ一方です。このままでは、ごみ処理の仕組みそのものが維持できなくなる可能性があります。そこで私は「廃棄物を燃やさずに活用する方法はないか」と考えました。廃棄物を処分するのではなく、エネルギーとして活用しながら収益につなげる仕組みがあれば、この課題を解決できると思ったのです。その実現に向けてリサイクルが難しい有機性廃棄物を中心に、廃棄物を水素資源として活用できる独自技術と、それをコントロールするIoT技術を自社で開発しました。そして廃棄物をエネルギーへと変換する仕組みを提供する企業として、事業を本格的に始動しました。私たちが最終的に目指しているのは、廃棄物から合成燃料の「e-fuel」をつくることです。e-fuel はCO₂と再生可能エネルギー由来の水素を組み合わせて生まれる燃料で、将来のガソリンに代わる選択肢として注目されています。ごみをエネルギーに変えるプラントを日本中につくることで、全国各地を「産油地」のような存在にできる未来を、本気で実現したいと考えています。
基本情報

株式会社BIOTECHWORKS-H2
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前6-18-3
神宮前董友ビルⅡ6F
受賞したビジネスに至った経緯
私がこの事業にたどり着いた原点は、アパレル企業を経営していたときの経験にあります。毎日のように発生する大量の廃棄衣料を、別の形で活かせないかと考え「衣料を水素に変え、その水素で再び服をつくる」という取り組みに挑戦しました。しかし、技術的には実現できましたが生産コストが大きく膨れ上がってしまい、ビジネスとして続けることはできませんでした。その後、一般家庭から出るゴミの成分を調べたところ、衣料とそれほど違わないことに気づきました。それならば衣料だけに限定せず、廃棄物そのものを資源として活用できるほうがいいのではないか。そう考えたことが、今のビジネスへ踏み出すきっかけになりました。より広く社会の役に立てる方法を探した結果が、現在の事業につながっています。
サービスの特徴
私たちの事業は、決まった形のプラントをそのまま販売するのではなく、地域の状況やお客様のニーズに合わせて最適なスキームを設計できる点に大きな特徴があります。技術面については専門技術に特化したパートナー企業と協働し、廃棄物の前処理からエネルギー利用までを含めて、事業全体をどのように成立させるかという“全体設計”を私たち自身が中心となってつくり上げています。
また、基本的には水素をつくりますが、水素が最適でない場合にはLPGや電力、その他の燃料へ変換することも可能です。地域の特性やお客様のニーズに合わせて、エネルギーの形を柔軟に変えられることも大きな強みとなっています。私が目指しているのは企業の成功そのものではなく、日本の強さを取り戻すことです。 日本のゴミ処理技術は世界でもトップクラスなのに、今もまだ存在感を十分に発揮できていません。その理由はとてもシンプルで、動きが遅く変化への対応に時間がかかるためです。だからこそ私たちは、スタートアップならではのスピードを武器に、日本発の技術を世界に広げたいと考えています。

現状の課題
現在の大きな課題の一つは、技術自体は確立しているものの、自社単独で運転する商用プラントの稼働実績がまだ十分ではないという点です。この状況を前進させる動きとして、2027年には富山県南砺市でプロジェクトが稼働する予定で、そこで実証データを蓄積していきます。さらに海外では、大型の商用プラント計画が複数進行しており、これらの案件も私たちの技術力を裏付ける実績となっていく見込みです。国内外で実証を積み上げることで「商用規模で確実に運用できる技術と体制がある」ということを明確に示していく考えです。
また、経営面での課題もあります。私はこれまで7つの会社を立ち上げてきましたが、スタートアップという形態は今回が初めてでした。そのため、CFOの役割や資本政策の組み立てについては触れる機会が少なく、組織づくりが後手に回ってしまった部分があります。今後の成長を考えると、まずは組織基盤をしっかり整えていくことが重要です。
さらに、技術継承も大きな課題です。現在、深いレベルで技術を理解しているのは私ともう1名の社員だけなので、将来を見据えた人材を計画的に育てていく必要があります。
また、中長期的な成長に向けては、IPOを視野に入れた経営体制の構築を進めて行かなければなりません。
今後の展開
東南アジアや中東では、ゴミ問題が深刻になる一方で、CO₂を減らす取り組みも急がれており当社の技術が必要とされる場面が多くあります。一方、日本では今後10年間が大きな転換期になります。高度経済成長期に建てられた多くのゴミ焼却場が、ちょうど建て替えの時期を迎えるためです。廃棄物処理の広域化が進んだことで、より大きな施設が必要とされるようにもなっています。この機会を逃さないため、令和15年頃に稼働する施設をターゲットに、各自治体と交渉中です。今後の目標として、2030年までに、最低でも5つの商用プラントを海外で動かしたいと考えています。これが実現すれば1日2000トン、人口にするとおよそ200万人の生活から出るゴミを処理できる規模になります。
また国内については、2035年までに47都道府県すべてで、何らかの形で私たちの技術が使われている状態を目指しています。そして2029年にはIPOやM&Aといった選択肢を視野に入れ、次のステージへ進むことが目標です。具体的な計画としては、2028年に売上50億円、2030年には売上100億円達成を掲げています。現在の当社の評価額は約10億円規模ですが、今後4年間で350億円規模まで成長させる計画です。私たちのビジネスは、一つのプラント契約だけで十数億円の売上が見込め、さらにその後も約15年間にわたってライセンス収入が続くモデルです。この構造を踏まえると、2028年までに最低5件の契約を実行することが、目標達成の鍵になります。
パートナー企業との連携で実現したいこと
東南アジアや中東では、ゴミ問題が深刻になる一方で、CO₂を減らす取り組みも急がれており当社の技術が必要とされる場面が多くあります。一方、日本では今後10年間が大きな転換期になります。高度経済成長期に建てられた多くのゴミ焼却場が、ちょうど建て替えの時期を迎えるためです。廃棄物処理の広域化が進んだことで、より大きな施設が必要とされるようにもなっています。この機会を逃さないため、令和15年頃に稼働する施設をターゲットに、各自治体と交渉中です。今後の目標として、2030年までに、最低でも5つの商用プラントを海外で動かしたいと考えています。これが実現すれば1日2000トン、人口にするとおよそ200万人の生活から出るゴミを処理できる規模になります。
また国内については、2035年までに47都道府県すべてで、何らかの形で私たちの技術が使われている状態を目指しています。そして2029年にはIPOやM&Aといった選択肢を視野に入れ、次のステージへ進むことが目標です。具体的な計画としては、2028年に売上50億円、2030年には売上100億円達成を掲げています。現在の当社の評価額は約10億円規模ですが、今後4年間で350億円規模まで成長させる計画です。私たちのビジネスは、一つのプラント契約だけで十数億円の売上が見込め、さらにその後も約15年間にわたってライセンス収入が続くモデルです。この構造を踏まえると、2028年までに最低5件の契約を実行することが、目標達成の鍵になります。


