AI工事写真アプリ「Cheez」で、これからの工事写真は「写真撮影するだけで」
第143回 かわさき起業家賞
会社紹介
プラントやビルなどの建設現場において、「工事写真業務」は欠かせない作業のひとつです。工事前から完成までの現場の様子を段階ごとに撮影し、決められた形式で写真台帳を作成します。これは法律でも義務づけられている、とても重要な工程です。しかし、この業務には大きな手間がかかります。1つの工事現場で撮影される写真は10,000枚を超えることもあり、一枚ずつ確認しながらパソコンのフォルダに仕分けていく作業には、膨大な時間を要します。そのため担当者の業務量は膨れ上がり、深夜まで残業せざるを得ないような状況を生み出していました。私自身、ごみ焼却施設などのプラント現場で長年監督を務めてきたこともあり、写真業務の大変さは身をもって実感していました。そこで「もっとラクに台帳を作成できないか」と考え続けたことが、今回の「Cheez(チーズ)」の開発につながっています。会社員だった私にとって、起業は遠い世界のことでした。しかし「この状況を変えたい」という強い思いが、挑戦へと踏み出す原動力になりました。このアプリを広めることで建設現場での働き方をよりよい方向へ導き、多くの方に必要とされるサービスへ成長させることを目指します。
基本情報

verbal and dialogue株式会社
〒671-1227
兵庫県姫路市網干区和久423番地48
受賞したビジネスに至った経緯
このアイデアにたどり着いたきっかけは、先述のとおり、プラント業界で現場監督として働いていたときの自身の経験にあります。当時、私は大きな負担となっている工事写真業務を、どうにか簡単にする方法はないかと考え続けていたのです。建設業界やプラント業界では、昔から慢性的な人手不足が続いています。さらに、現場のデジタル化が十分に進んでいないという課題もあります。今後ますます人手が減っていくことを考えると、作業を効率的に進める仕組みの導入は不可欠です。そうした状況を踏まえ、「もし写真を撮るだけで台帳が自動生成される仕組みがあれば、現場は一気に楽になるはずだ」と考えて、このアイデアを具体的な企画へとまとめていきました。Excelや既存のソフトを使った写真整理の方法はあったのですが、どうしても手作業に頼る部分が多く、操作しづらいと感じる場面も少なくありませんでした。そこで私はAIの技術を取り入れ、誰もが直感的に使える“新しい写真管理の形”をつくろうと考えました。その後、私の構想は経済産業省の支援事業に採択され、3年前には前職の社内ベンチャーとしてプロジェクトがスタート。現在は会社を離れて独立し、スタートアップとして本格的に事業を進めています。
サービスの特徴

「Cheez」の特徴を一言で表すと「写真を撮るだけで工事写真業務は完了、ユーザーに一切負担のかからないアプリ」というものになります。工事写真は、どこで・いつ・どんな作業を行ったかを記載した「工事黒板」と一緒に撮影するのが一般的です。「Cheez」は、この工事黒板の内容を OCR(文字読み取り技術)で解析し、その情報を写真データに自動でタグ付けします。これにより、写真の分類や整理は、すべて自動化できるようになりました。これまで担当者は、現場を終えたあとに事務所へ戻り、パソコンに向かって写真業務を進めていました。写真をフォルダに振り分け工程順に並べ替え、台帳のフォーマットに貼り、工事内容を入力して報告書にまとめます。さらに工事が始まる前には、事前準備として工事情報をひたすら手入力する工程もあり、案件によっては準備だけで70時間以上かかることもありました。こうした課題を解決するのが「Cheez」です。「Cheez」があれば、これらの作業が一切不要になります。また、この世界にはデジタルツールに苦手意識を持つベテランの職人さんも少なくありません。特に年配の方はアプリというだけで敬遠してしまうケースもあります。しかし「Cheez」なら、必要なのは“写真を撮ること”だけ。撮影するだけで台帳が自動生成されるので、デジタルが苦手な方も安心です。実際、多くのお客さまから「これなら使える」「作業がぐっと楽になった」とご好評をいただいています。
現状の課題
最大の課題は人材不足です。現在、フルタイムでコミットしているのは私一人で、他の4名は前職時代の同僚や知人に業務委託として参加してもらっています。全員、現場監督としてのバックグラウンドを持っているので、工事の経験は豊富なのですが営業やお客様対応ができるのは、現状私一人しかいません。そのため多くのお問い合わせをいただいているにもかかわらず、対応しきれずにご不便をおかけしている状態です。より多くの方にサービスをご提供するためにも、体制の拡充が急務となっています。できれば現場の実情を理解し、共感してくれる仲間と一緒にこのサービスを育てていきたいと考えていますが、私も含めて現在のメンバーは、経営や営業などの経験はほとんどありません。今後は、そうした分野に長けたプロフェッショナルな方のお力もぜひ借りながら、より良い組織づくりを目指していけたらと思っています。サービス面にも課題があります。先述のように「Cheez」は、工事黒板の写真情報をOCR技術で読み取り、自動で整理・管理する仕組みを採用しています。ただし、現場によっては工事黒板を使わないケースもあります。その場合は写真の内容から作業や工程を判断することになるため、現場経験のあるスタッフが手作業で対応しているのが現状です。将来的には、こうした工事黒板のない写真でもAIが判断して分類・整理ができるような機能を実現させ、あらゆる現場で使えるサービスへ進化させていきたいと考えています。
今後の展開
今後の事業展開としては、主にご利用いただいているプラント、建築、土木、リフォーム業界での利用拡大に注力していきます。これらの業界は工事写真での記録が欠かせないため、アプリの導入による効果を強く感じていただけるはずです。また同じように、写真管理を必要としている他の業界への横展開も計画しています。例えば物流、不動産、ビルメンテナンスなどでも業務記録としての写真管理は日常的に行われています。こうした企業にもニーズに合わせた提案を行い、導入を進めていきたいと考えています。さらに、国内だけでなく海外での展開も見据えています。工事写真の記録は海外でも広く行われているため、当社のアプリが活用される余地は大きいでしょう。こうした事業拡大を進めながら、今後6年以内のIPOを目指し、より多くの方に選ばれる企業へと成長していきます。
パートナー企業との連携で実現したいこと
「Cheez」は、使っていただければきっと“便利だな”と感じてもらえるアプリだと思っています。特に川崎市のプラント業・建設業のみなさまには、現場の作業をぐっと楽にできるツールとしてお役立ていただけるはずです。そんな思いから最初のお取引は無償で提供させていただいています。まずは一度、実際の現場で試していただき、効果を体感いただければ何よりうれしく思います。そして、川崎市の地元企業のみなさまとパートナーシップを深めながら、建設現場が抱えるさまざまな課題に向き合い、業界全体の働き方をより良い方向へ変えていく未来をともに築いていければと思っています。



