サプライチェーンを可視化し、見えない経営リスクを最小化する
第143回 かわさきビジネス・アイデアシーズ賞
会社紹介
変化の大きな時代のなかで、製造業を取り巻く環境は厳しさを増しています。リスクが多様化し、サプライチェーンは複雑になり、人の力だけで安定供給を守り続けることには限界が見えてきました。私たちはこの課題に向き合うため、世界中のサプライチェーン情報をつなぎ、安定したものづくりを支えるリスク管理サービス「Resilire(レジリア)」を提供しています。私がリスク管理の必要性を強く実感したのは、2018年の西日本豪雨で自ら被災したことがきっかけでした。気候変動や自然災害は前触れなく訪れ、事業や私たちの暮らしに大きな影響を及ぼします。だからこそ起きてから対処するのではなく、あらかじめ備えられる仕組みが必要です。こうした課題意識から生まれた本サービスは、現在、大手製造業の購買部門を中心に導入が進んでいます。また、自動車部品や完成車メーカー、医薬品、化学品、電子部品など幅広い分野にも採用され、それぞれの現場に応じたリスク管理を支援しています。私たちが目指しているのは、想定外の事態が起きても、ものづくりを止めない未来をつくることです。より強く、しなやかな仕組みを築いていくことで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
基本情報

株式会社Resilire
〒105-7510
東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝 10F
受賞したビジネスに至った経緯
当社はもともと、気候変動や自然災害のリスクに対応するBCP(事業継続を支援する)サービス)を提供していました。しかし「まだ起こってもいない問題への備えには予算を割けない」という声をいただくことが多かったので、今すぐ解決が必要とされる課題にも目を向けるようになりました。そんな折に始まったのがコロナ禍です。ある製薬会社のクライアントから「医薬品の供給が止まってしまうかもしれない。どうすればよいか」という切実な相談が寄せられました。背景にあったのは、中国のロックダウンによって原薬の調達が難しくなったことです。これは製薬会社にとって事業継続そのものを揺るがしかねない深刻な事態でした。この出来事を機に私たちはサプライチェーンに特化したリスクマネジメントサービスの必要性を強く感じ、本格的に立ち上げる決断をしました。この新しい挑戦に向けてプレスリリースを発表したところ、大手経済紙に取り上げていただき、多くの製造業の企業からお問い合わせをいただきました。製造業界を代表するような企業からも反響をいただけたことで、「このサービスは社会に必要とされている」という手応えを得ることができました。
サービスの特徴
大きな特徴は、直接の取引先からその先のサプライヤーまで、サプライチェーン全体のつながりを可視化できることです。さらに世界各国のニュースや公的機関の情報をもとに、事業に影響するリスクをリアルタイムでモニタリングできる点にも強みがあります。特にユニークなのは、数万社規模に及ぶ膨大なサプライチェーンデータを、各取引先と連携しながらクラウド上で共有・可視化できることです。単にデータを蓄積しているだけではなく関係者と一緒に活用できる点に、私たち独自の価値があると考えています。クライアントからは「サプライチェーンデータを管理するための“箱”を提供している企業は多いが、その中身を“どう埋めるか”までを具体的に提案してくれた企業は初めてだ」という声をいただいています。また、各ステークホルダーからどうすれば必要なデータを出してもらえるかを具体的に提案できることも強みです。加えて、自然災害だけでなく、サイバー攻撃や人権の問題など、さまざまなリスクを幅広くチェックできる点もクライアントから高く評価されています。
現状の課題
AI機能を、より現場で使いやすいものにしていくことは今後の大きな課題の一つです。すでにAIの開発と提供は始めていますが、クライアントの現場で十分に活用できるレベルにまで高めていくには、なお改善の余地があります。今後はAIエージェントの開発も進めながら、活用の幅をさらに広げていきたいです。また現在取り組んでいる領域にとどまらず、品質リスクや物流の遅延リスクのモニタリングなど、より幅広い領域をカバーできる体制を整えることも重要だと考えています。一方、サービスを広げていく上で、ターゲットとなる企業側の受け入れ体制や認識を整えていくことも大きな課題です。経営層がサプライチェーン上のリスクをあまり分かっておらず「現場の経験で対応できるだろう」と考えられているケースもあります。また、新しいソリューションを運用する体制が整っていなかったり、人手不足でリスクマネジメントまで手が回らなかったりすることで導入に至らないこともあります。しかしサプライチェーンリスクへの備えは、これからのものづくりを支える大切な基盤になるはずです。それだけに現場で実際に使える形に落とし込みながら、無理なく取り組めるサービスにしていくことが欠かせないと考えています。組織面では、事業と組織が年々倍程度のペースで拡大しており、その成長に見合う採用体制を維持できるかが課題です。一方で、サプライチェーンに精通した人材や大手製造業向けシステムの提案・導入を担ってきたメンバーが集まりつつあり、チームとしての強みは着実に高まっています。今後もサービスの進化と組織づくりの両面をさらに強化しながら、より多くの企業にとって実際に役立つ存在へと成長していきたいと思っています。
今後の展開
今後の目標は、Resiliaを世界中の製造業に広く使われるプラットフォームへと成長させることです。大企業にとどまらず中堅・中小企業も含め、より多くの現場で活用される存在になることを目指していきます。その実現にはAIの力をさらに活かしていくことが欠かせません。今後はサプライチェーンを取り巻く外部環境の情報も踏まえながら、将来のリスクを見据えて意思決定できる機能や、これまで人が担ってきた管理業務をAIが支援・代替できる機能を充実させていきたいと考えています。また私自身の目標は、この会社を自分がいなくなった後も社会に価値を届け続けられる存在にすることです。一時的な事業で終わるのではなく、未来にとって本当に必要とされる仕組みやイノベーションを残したい、という思いがあります。私はものづくりの発展こそが、これから起こるさまざまな変化や危機に向き合う力になると信じています。それゆえに人類の発展を支えるインフラの一つとして、Resliaを社会に広く根付かせていきたいと思っています。
パートナー企業との連携で実現したいこと
今回このオーディションに参加したのは、川崎の製造業のみなさんに私たちの取り組みを知っていただくきっかけをつくりたいと考えたからです。あわせて、事業やアイデアをさらに磨いていくため、さまざまな立場の方からご意見をいただきたいという思いもありました。今回の受賞をきっかけに、ものづくりの現場に関わる方々や、企業に価値を提供されている方々と力を合わせ、業界全体をより強くしていく取り組みにつなげていければと考えています。特に銀行、コンサルティングファーム、SIerなど、製造業と深く関わる方々と協力しながら、ともにその未来を支えていくことができればうれしく思います。

