太陽光で走るマイクロモビリティで地域の移動と防災の課題を解決
第146回 かわさきビジネス・アイデアシーズ賞
会社紹介
私たちは、太陽光発電技術を活用したマイクロモビリティ製品・サービスを提供しています。自動車のような大型の乗り物を太陽光だけで走らせるのは、現在の技術ではまだ難しい状況です。一方で、自転車や電動バイクのような小型の乗り物は太陽光と相性がよく、買い物や通勤など、日常の近距離移動であれば、太陽光の電力を有効に活用できます。
私たちはこのマイクロモビリティの特長を活かし、環境にやさしく、誰もがもっと気軽に移動できる社会の実現を目指しています。
この事業の原点は、大学在学中に経験した東日本大震災です。公共交通機関が止まり、移動や電源の確保が難しくなる状況を目の当たりにしたことで、電力供給や交通インフラに頼らない仕組みの必要性を感じました。そこで着目したのが太陽光発電です。停電時でも使える太陽光を、移動手段や電源の確保に活かせないか。そう考えたことが、現在の製品開発の原点になっています。
普段は便利な移動手段として。いざというときには暮らしを支える備えとして。地域の生活を守る新しい移動の仕組みをつくっていきたいと思っています。
基本情報

株式会社HelioX
〒171-0022
東京都豊島区南池袋2丁目47-7-8F
受賞したビジネスに至った経緯
東日本大震災での経験をきっかけに、大学卒業後は、大手総合電機メーカーや大手通信会社で、災害時にも役立つ通信システムの研究開発に携わりました。そのなかでも転機となったのが、太陽光発電を活用した無人航空機のプロジェクトです。太陽光で発電しながら飛行する航空機を使い、通信ネットワークを支える技術に関わったことで、太陽光エネルギーにはさまざまな分野で活用できる可能性があることを学びました。
この経験から、「日々の移動を支えるモビリティに太陽光発電が応用できるのではないか」と考え、2022年ごろから本格的に開発に着手しました。
はじめは、既存の技術を使えばスムーズに実用化できるだろうと考えていました。しかし、実際に始めてみると課題が山積みでした。
特に難しかったのは、車両に搭載できるソーラーパネルの面積が限られる中で、必要な電力を安定して確保しなければならなかったことです。複数枚のパネルを効率よく使いつつ、発電量のばらつきをコントロールする必要がありました。限られた電力をいかに無駄なく活用するか。その課題に向き合いながら研究開発を重ね、製品化の目途が立ったことから、2024年に会社を設立しました。
近距離移動をめぐる環境の変化も、事業化を後押ししました。日常の足として親しまれてきた50cc原付は、2025年に新車生産が終了しています。地方では、免許返納後の高齢者の移動手段に加え、バスや電車の運転手不足なども課題になっています。
こうした状況から「近距離を気軽に移動できる小型モビリティには可能性がある」と確信し、起業へと踏み出すことになりました。
サービスの特徴

現在、当社が提供しているのは、16歳以上の方であれば免許なしで利用できる特定小型のモビリティです。太陽光を活用して、日中に少しずつ電力を蓄えられることがポイントです。コンセントにつなぐ手間を減らせるだけでなく、ゆっくり充電されることでバッテリーへの負担が抑えられ、劣化の軽減や安全性の向上にもつながります。
また、いざというときには非常用電源としての役割も果たします。日常の移動手段と、災害時の備えを両立できる点は、このサービスの大きな特長です。さらに、地方や観光地では目的地までの移動手段が限られることも多く、免許不要で利用できる当社のモビリティは、観光客や外国人の方にも使いやすい選択肢になると考えています。 サービスを導入していただく自治体や事業者向けには、クラウド管理システムも提供しています。GPSで車両の位置を確認したり、遠隔で制御したりできるため、複数台を導入する場合も管理しやすくなります。走行データやCO2削減量なども可視化でき、SDGsやESGに関する取り組みの発信にも役立ちます。
現状の課題
太陽光発電を活用したマイクロモビリティは、まだ広く知られているものではありません。まずは多くの方にその存在を知っていただき、便利で安全な移動手段であることを伝えていく必要があります。そのために、自治体や企業と連携した実証実験を通じて、実際の使いやすさや効果を丁寧に示していきたいと考えています。
同時に、実証にとどまらず本格導入につなげていくことも重要です。現在は、河口湖や箱根などの観光地でシェアリングサービスを展開し、ホテルと連携した宿泊客の周遊手段としても手ごたえを感じています。一方で、観光地や宿泊施設への営業は容易ではなく、導入効果を理解いただいても、意思決定までに時間がかかるケースも少なくありません。今後はさらにネットワークを広げ、本格導入につながるパートナーシップを増やしていきたいです。
また、製品ラインナップの拡充も進めていく必要があります。現在の車両だけでは対応しきれないニーズもあるため、今後は電動アシスト自転車や、低速で走行できる四輪タイプのシニアカーなども投入していく予定です。ユーザーからは、二人乗りできる車両や、より速度の出せる車両を求める声もいただいており、そうした車両の開発もめざしています。
今後の展開
電動アシスト自転車については、今夏の発売をめざして開発を進めています。この車両の大きな特長は、航続距離の長さです。1回の充電で100km以上走れる仕様を想定しており、車体に搭載された大型のソーラーパネルにより、短い充電時間でも10㎞、20㎞と、走行距離を伸ばすことが可能です。後部に取り付けたボックスは、買い物用、防災用、配達用など、用途に合わせてカスタマイズできます。
また、災害時には非常用電源として活用できるよう、USB Type-Cへの対応を進めていて、最大60Wの出力が可能になる予定です。さらに後部ボックスにもソーラーパネルを搭載しており、取り外せば、車体から離れた場所でも電源として使用できます。
将来的には、海外展開も視野に入れています。国によって法律や車両基準は異なりますが、安全性や品質への要求が高い日本市場で実績を積むことは、大きな強みになると考えています。そのためにも、まずは国内で導入事例を増やして、次の展開につなげていきたいです。
パートナー企業との連携で実現したいこと
みなさまと実現していきたいことは、大きく二つあります。観光地や地域でのサービス導入を広げていくこと、そして、製品開発における連携です。
サービス導入の面では、観光協会や宿泊施設、自治体、地方創生に取り組む企業・団体のみなさまと連携できればと考えています。観光客や地域の方の近距離移動を支える手段として、当社のサービスを活用いただけたらうれしいです。また、車両の販売拡大に向けて、販売代理店や販売ネットワークをお持ちの企業のみなさまにも、力を貸していただければと思います。 製品開発では、弊社の技術を小型モビリティ以外の領域にも応用していく方針です。屋外ロボットや芝刈り機、自動運転車両など、屋外で長時間稼働する機器の充電・電力供給に課題をお持ちの企業がいらっしゃれば、ぜひお声がけください。こうした分野でも、私たちの技術を通じて貢献していきたいです。


