役目を終えた化粧品を多用途色材へとアップサイクル
第146回 かわさきビジネス・アイデアシーズ賞
会社紹介
「コスメの廃棄問題」は、非常に大きな環境課題のひとつです。ご家庭にも最後まで使い切れずに残っていたり、出番のないまま眠っていたりするコスメがあるのではないでしょうか。当社の独自調査では、86.3%の人が「使いきれなかったコスメを捨てた経験がある」と回答しています。廃棄されているのは、家庭内のコスメだけではありません。化粧品メーカーの開発過程で生まれる試作品や、商品化に至らなかった粉末状のバルク(中身)、返品された商品など企業側で廃棄されるコスメも数多く存在します。これらの処分には、巨額の廃棄処理費用がかかっているといわれています。つまり、まだ価値があるにもかかわらず、使い道がないまま処分されているコスメが家庭にも企業にも膨大にあるのです。
私たちはこの課題を解決するため、不要なコスメを回収し色材として再資源化するアップサイクル事業を展開しています。廃棄されるはずだったコスメを、もう一度社会の中で活かす。そして「もったいない」という罪悪感を「楽しい」「面白い」という前向きな体験へと変えていく。そんな「コスメの資源循環」をつくることが、私たちの目標です。
基本情報

株式会社モーンガータ
〒176-0001
東京都練馬区練馬1丁目5番4号 MIビル 401号室
受賞したビジネスに至った経緯
起業のきっかけは、代表の田中寿典が化粧品メーカーで研究職をしていたときに感じた問題意識でした。化粧品は「薬機法」という法律のもとで、品質や安全性に十分配慮して製造されています。そうした高品質なコスメが、日の目を見ないまま捨てられていく。その現実を前にして「何か別の形で活かせないだろうか」という思いを抱くようになりました。一方、共同創業者であり代表の姉である田中麻由里も、コスメユーザーとして同じような課題意識を持っていました。気に入って購入した化粧品でも、最後まで使い切れずに残ってしまうことは珍しいことではなく、結局は捨てるしかない。そのたびに「もったいない」と感じていたのです。もともと雑貨ビジネスに携わり、ワークショップなどを通じてものづくりの楽しさを届けていた彼女は「コスメをただ処分するのではなく、別の楽しさや体験へと変えられるのではないか」と考えるようになります。メーカーの現場で見えていた課題と、消費者として感じていた違和感。姉弟それぞれの視点が重なり、「廃棄されるコスメを新たな形で活かす」という事業の構想が生まれました。
サービスの特徴

主に一般消費者向けのBtoCと、企業向けのBtoBの二つの軸でサービスを展開しています。BtoCでは、ご家庭でコスメのアップサイクルを楽しんでいただくため、粉末化粧品を水溶性色材へと変える特殊な溶液「magic water」を開発しました。代表が研究者として培ってきた技術を活かしたもので、特許も取得しています。使い切れなかったコスメを、お客さま自身の手で絵具や雑貨用色材へと変えられることが特徴です。また大型商業施設と連携し、不要になったコスメの回収や、アップサイクルを楽しめるワークショップも開催しています。たとえば「magic water」でつくった絵具を白い造花に塗る「フレグランスフラワーワークショップ」や、アロマキャンドル作りなどです。この取り組みは、コスメが新たな形に生まれ変わる過程を身近に感じていただけるだけでなく、商業施設の集客や、サステナビリティ活動にもつながっています。一方、BtoBでは当社のアップサイクル色材を印刷用インクとして活用いただく事例が多く、名刺の裏面やメッセージカードなどに採用されています。さらに水性ゲルインキボールペンなどの文具をはじめ、カラーコンクリートや金属塗装、内外装用の塗料など、活用の幅は建材領域にも広がっています。化粧品のアップサイクルに取り組む企業はほかにもありますが、個人のお客さまだけでなく、化粧品メーカーからも廃棄コスメを直接回収し、印刷物から建材まで多様な用途に展開できる点は、当社ならではの特徴です。
現状の課題
BtoCにおける課題は、アップサイクルできる対象が現時点では主に粉体状のカラーコスメに限られていることです。回収するコスメには容器なども含まれるため、現在はそれらを保管しながら、再資源化に向けた技術構築を進めています。将来的にはコスメの中身だけでなく、容器も含めた100%の再資源化をめざしています。BtoBにおける課題は、幅広い用途に対応できる色材技術を持ちながら、採用事例がまだ十分に広がっていないことです。当社では印刷インクから金属塗装まで、さまざまな形で色を付ける技術を構築しています。今後は既存の製品への色づけや印刷物、ラベル、パッケージなど、多様な用途での実装を増やしていくことをめざしていきます。組織面では、人材確保と拠点整備が課題です。現在は4名体制のため、事業拡大に向けた組織づくりが必要になっています。また、回収したコスメの量も増えており、新たに静岡県三島市に倉庫を設けるなど、拠点整備も進めています。
今後の展開
私たちが実現したいのは「あらゆるものをコスメ色に彩る」世界です。使いきれなかったコスメや、廃棄されるはずだったコスメにも新たな使い道があることを、より多くの方に伝えていきたいと考えています。そのため一般のお客さまに向けては、不要になったコスメの回収から、分別、アップサイクル、新たな素材や製品として再び届けるまでの流れについて、体験として実感できる機会をもっと増やしていきたいと思います。商業施設でのワークショップやイベント、自社製品の展開などを通じて、コスメが新たな形に生まれ変わる循環を身近なものにしていきます。企業向けには、私たちの技術で何が実現できるのかを、より具体的な形で示していくことが重要です。そのためにも「こんなこともできるのか」と感じていただけるような、インパクトのある実装例が必要です。
その一つとして、今後力を入れていきたいのが空間づくりの領域です。当社の色材は建物や部屋の内装、壁や床などの建材にも活用できます。廃棄されるはずだったコスメの色が、空間そのものを彩る。そうした目に見える展開が、コスメのアップサイクルの面白さや可能性をより分かりやすく伝えてくれると考えています。
パートナー企業との連携で実現したいこと
私たちは、まだ再資源化が実現できていない素材や部材についても、資源として活かせるよう技術開発を進めています。その実現に向けて、世界でもトップレベルの技術を持つ企業が集まる川崎のみなさまとつながり、ケミカルリサイクルなどの技術面からお力をお借りできれば大変心強いです。また、業種を問わず幅広い企業さまに当社の色材を製品の色づけや印刷物、パッケージ、空間づくりなどにぜひ採用いただきたいと考えています。既存の製品やサービスに、アップサイクルという新たなストーリーや、サステナブルな価値を加えられる点も、当社の色材を活用する大きな魅力です。さらに、教育分野との連携にも、大きな可能性を感じています。コスメを色材として生まれ変わらせる体験は、資源循環やものづくりについて考えるきっかけにもなります。学校や行政、地域の取り組みともつながりながら、ワークショップや教材としての展開も広げていけたらうれしいです。


